〜第6回詩人大賞〜
〜結果発表〜

プロ詩人
「假奈代賞」


上田先生からコメントを頂いております。

●詩人大賞によせて

テーマ1 該当なし
テーマ2 no.79

「ネット詩」と呼ばれるジャンルがあるとすれば、
それは、液晶画面で読みやすいことが大前提としてあるだろう。

コンピュータに疎いわたしだけれど、素人考えでも、
「ネット詩」には、いくつかのことが重要と考える。

どんなマシン、ブラウザでも表示されること、
データ量が軽いこと、フォントや文字色、背景色に配慮が要る。

絵や写真、音を付け加えることも選択範囲のなかにあるだろう。

兎に角ストレスの少ないサイト構成であることが、のぞましい。

これらを基本事項とした上で、詩の品質が問われる。

この「ぽえむの部屋 詩人大賞」をわたしのマシンで見ると、
背景色白、墨字、16ポイントくらいの大きめ細明朝体、横書きに統一され、
膨大なテキストではあるが、なんとかストレスなく、拝読できた。

管理者の配慮によって整理された詩編は、
先月引き受けた某大学の提言審査の原稿用紙の手書き文字から受けたような
筆致によるこちら側の想像力への刺激は全くなくなる。

もちろん、それは、詩編を審査するうえで、統一された枠組みのなか、
詩そのものの「言葉はこび」を吟味することになるのだから、それでよい、のこれら
だ、が、
ほんの少し、この詩編が手書きで書かれていたら、どんな風に感じるのだろうか、と
興味がわいた。

ことわっておくが、わたしは手書きを好んでつかう詩人ではない。
言葉と読者の距離、言葉と自身との距離を考えると、活字であることを希望する。
自意識の滲みを筆致であらわすよりも、活字という砦のなかで、
もし決壊するとしても、ぎりぎりまで抑制を効かせたいと思っている。


テーマ1においては、大賞への該当作はなかった。

キーワードの「窓」「光」「泥水」は、比較的イメージのつくりやすい抽象性がある
ため
多くの作品が、この3つの言葉の意味のなかに閉じこもっている。

詩のなかで、唐突にキーワードが挟み込まれ、また、このキーワードに
作者の主旨を預けてしまう傾向がみられた。
せっかくのキーワードなのだから、これらの言葉の積極的な展開を見たいと思った。

次に、印象に残った詩編のいくつかについて、感想を述べていく。

キーワードの馴染み方が秀逸だったのは、no82「声」。
自然な感じで取り入れられていた。
この作品は「声」を主眼におくことによって、キーワードが重要な脇固めをし、
読後が爽やかであり、好感を持った。
けれど、「声」という「自身のこころの奥の意識」を取り扱うには、漠然としすぎ、
情緒に流れすぎている。
おそらく、詩編としてはもっと長文になるか、リアルな声の取り扱いが必要だろう。

タイトルが面白いと思ったのは、no03「行けても火星が限界」。
パンッと開けた明るく乾いた感じは、現代の道を歩いている若者たちの姿に重なった。

no46「選択日和」は、短く簡潔な本文だけに、タイトルに一工夫あればもっとよくな
るだろう。
作品文末をさらに展開させるようなタイトルにして、短詩特有の発見の喜びを描きだ
してほしい。

また、no59「るぅーむ」は、作者の考え方とそれを伝える文体に惹かれた。
ただし、行間をつくり、連にする必要がある。
これをつくることによって、詩の構成と転換が、もっとしっかりしたものになり、
最初の出だしを活かし、さらに後半部分にもっと説得力があれば、よい作品になると
思われる。

no121「死別」は、主題はおもしろいのに、本文のなかで、その情感が描ききれてい
ないのが残念だった。
死去した母の思い出に光がさしこんでいるのに、母の表情が思い出せない、というの

どういうことだろうか。思い出せないその理由が示唆されていないので、
読後に尻切れとんぼな感じが残った。


テーマ2も「出逢い」を感じさせるという漠然としたお題のせいか、
客観性、リアルのない恋愛詩が目立った。
恋愛詩が駄目だと言っているのではなく、作者の立ち位置があまりに茫漠としていて
詩として整理もついていないし、作品としての強度がない。
読者としての想像力も刺激されないし、詩の中にある切り取られた場所が浮かびあがっ
てこない。

その中で、場所がたちあがってきた作品を大賞に選んだ。
no79は、すれちがった二人の旅人が「じいんじいん」という呪文のような
挨拶をした、というそれだけの話である。
その瞬間の出逢いを、淡々と描いているからこそ、この詩の面白さがある。
寺院が立ち並ぶ真夏の太陽を想像したのは、けしてわたしばかりではないだろう。

会話体の約束事「」を使わずに、あえて地の文にしてあることも、こころ憎い。
後半の一行「私は体じゅうが熱くなって」の部分で、この二人の心の動きを読もうと
するのだが、
読み切れないのが、残念なようでもあり、あっさりと裏切られた感じも小気味よい。

最後の一行「不思議な挨拶だった」が、その景色をもっと強化するような言葉で
締めくくるような、もうひとひねりほしかった。

その他に印象に残ったのは、no96、ピストルと指の詩。

前半から中盤へかけての、畳みかけてくるような筆運びに勢いがある。
せっかくツカミがあるのに、最後の3行で失速し、こじつけて終わってしまうのが残
念。


テーマ1と2とも、お題の言葉のまま意味を限定してしまう作品が多かった。
詩作の面白さのひとつに、「ちいさな発見」があると、わたしは考えるのだが、
あまりに常套句的な集結に終始する詩がおおく、自分の思考を練り上げる訓練を
もっとしてほしい、と思う。
観察力、洞察力、リアルな言葉をみつける粘り強さを持ってほしい。
その人の今を生きる瞬間の切り取りが見たい。

そして「ネット詩」であるならば、「短詩」をもっと勉強してみてはいかがだろう。

短い行数のなかで、キュッと凝縮された言葉の運びは
読者の予想を裏切り、ここちよい跳躍感で想像力を刺激する。

短詩のなかでも、技法はいくらでもある。
シーンがどんどん変化するカットアップを用いてみたり。
行間の空白に余韻を漂わせ、回線の向こうの他者を、つまり世界を感じさせるような。

ネット詩だからこそ、
言葉を、気分や、感情で、流すのではなく、
今ここで、あなたと繋がる誰かに、詩をとおして伝える、ということを考えたい。

最後に、作品を寄せてくださった詩人、読んでくださった読者、わたしに
詩人大賞審査を任せてくださった管理者に感謝を。

上田假奈代                             http://www.kanayo-net.com

コメントに出てきた作品No.作者
テーマ1
No.82:Jyuntsuさん
No.3 :凌さん
No.46:高梨 凪早さん
No.59:吉井春樹さん
No.121:cameさん
テーマ2
No.79:Jyuntsuさん(假奈代賞受賞)
No.96:やからさん


コメントありがとうございました。 管理人:くろ