NO.26
【空】
小さかったから
上なんて
見上げなくても

構わないのさ

水溜まりを
蹴飛ばして

飛沫の
弾ける様にだって

いつだって
ドキドキしてた


小さかったから
上なんか
見上げなくたって

構わないのさ

黄色い世界の中
雨粒のオーケストラ

同じ様で違う
この世界の音色に

いつだって
ワクワクできる


だから
上なんか見なくたって

構わないのさ
NO.27
【空】

窓からするりと入り込む
ひんやりとした風に目を細め

窓に切り取られた景色を眺めて
今日もいつもの一日が終わる


地の果てまで泳いでゆけば
いつかは翼を手に入れられると

水溜りを泳ぐ魚が
ただひたむきに
光に憧れるように


この部屋から始めよう
ひたむきに
がむしゃらに
ブルーに溶け込むその日まで


NO.28
【空】
今は雨続きで止まなくたって

必ずぽかぽか晴天やってくる

あわてず
いそがず
のんびりと

雨が水溜まりとなり大地を潤すように

いつか心に降るその雨が
やがて自分の糧となる
NO.29
【空】
足りなかった
言葉の溝に

流れ込んだ
無言の涙


水溜まりから
見上げる君に


素直に言えた

雨あがり





NO.30
【空】

見おろせば
リアルな模型

雲の隙間から
君を探して

小さくなる
小さくなっていくのに

別れ際
君の足元の
水たまりが

きらきら
きらきらと

僕を離さないから

寂しくないよと
飛行機雲に
想いを乗せて―
 
 
 
NO.31
【空】
六月六日の晩だった。
沁み垂れた顔で、何時ものように、帰宅しようとしている学生が見える。
彼はきっと親元で暮らしている。
週末以外なら毎日同じように彼の姿を見ることができるが、彼が私を見掛けたことは無いだろう。
大概は一人で、時として騒がしいばかりの友人と面倒臭そうに帰っている。
だが私が彼を見たのは此道ばかりでは無い。
うちのビルジングのすぐ下にある公園で、
恋仲なのであろう女子と、唯無言の侭腰掛けて居るのを見付けた。
二人とも同じ様な方向を向いて居て、最後の行動まで心ばかりが揺れていた様だった。

今此部屋の中には水溜まりがある。
紫陽花が産み落とした水溜まり。
避けるとも戯れるとも無く、其中に身を置き、
窓を半ば開けては帰宅途中の彼を見やって居る。
夜が隠し持っている紫陽花の露のきらめき。
彼には見えているだろうか。
今夜十二時を周れば私は一つ歳を取り 、
彼の何かとは大きな隔たりが出来てしまう。

彼の軆が浸る水溜まりは、何を映しているだろうか。
私と違う、何を映しているだろうか。